飲み物を買って、意を決してゆっくり振り返る。
きっと馬鹿にした様な顔で笑っていると思った。
ゆっくり見上げた楓の顔は、ただ優しく私を見ていた。
その顔があまりにも優しかったから、再び伸びて来た手を私は振り払えなかった。

ー楓、楓はいつからそんな顔で私を見るようになってたの？ー
繋がれたこの手を握り返す事は出来なかった。
それでも離れない様にしっかり楓が繋いでくれていた。

花火会場まで来ても、おばさん達は見当たらなかった。
楓の手はずっと握られたままだ。
打ち上げ花火が始まり、辺りを大きな音と綺麗な光が広がった。

一瞬にして気持ちが花火にいった。
毎年かなりの本数を打ち上げてくれる大会なので、始まりから連続打ち上げで盛り上げてくれた。
あまりに綺麗で、思わず楓に向かって笑いかけた。

楓は私に気が付いて、微笑み返してくれた。
その楓の笑顔で、私はさっきまでの気持ちが落ち着いた。
その笑顔はいつも一瞬にバスケをしていた少年の笑顔だった。

何だ。楓はずっと私にこの笑顔を向けてくれていたんだ。
私は嬉しくなって、再び花火を見上げた。

少しだけ、握られた手に力を込めた。