いつもの様にふと気にした屋上で、その日はいつもと違う風景があった。
屋上には、流川と鮮やかな赤い髪の色をした男の子がもみ合っている様に見えた。

よく見たら、流川が流血している様に見えた。
仁美はびっくりして、すぐに屋上に向かった。
急いで向かい、ドアを開けると、そこには数人の男子と、揉み合う流川と赤い髪の男の子と、それを止める女の子が居た。

やっぱり流川は頭から血を流していた。
「楓！」
仁美が割って入り、2人を引き離した。
赤い髪の男の子は、流川と同じ位の身長で、明らかに怒って流川を睨んでいた。

どういう状況か分からなかったが、目の前で大きな怪我をしている楓に、仁美は寄り添った。
「‥血が凄い、大丈夫？」
仁美はハンカチを差し出して、流川とそのまま保健室に向かった。
残った屋上のメンバーで、揉めている声が聞こえたが、仁美は気にしないで流川について行った。

これが、桜木軍団と春子との出会いだった。

保健室に行ったら、先生がいたので流川の傷を見せた。
たまたま血が多く出る場所を傷付けてしまっただけで、大事には至らない様だ。
その説明を聞き仁美は安堵した。

流川がこんな風に他人と怪我をするまで喧嘩をするなんて仁美は知らなかった。
もっと対人関係はクールだと思っていたので、少し戸惑いもある。
流川は怪我を負わされた事に、イライラしている様だった。

「‥喧嘩しても、怪我だけはしないでね」
バスケが出来なくなったり、純粋に流川が怪我をしたら、仁美だって心配だし、胸が痛む。
「‥うす。」
その日の流川は、仁美から小言を言われてもいつも以上に大人しく言う事を聞いていた。