上から、二階の洗面所を使っている後がしたので、流川が用意し始めたのを確認し、仁美は台所に行き、朝ごはんであろうパンを温めてなおしていた。

降りてきた流川に、早く朝食を食べろと促して、仁美も流川の前に座った。
黙って朝食を、食べる流川を見ながら、仁美は神奈川に来ることになった日の事を思い出していた。

あれは中学３年生の、ほぼ進路先も決めた頃だった。
おばあちゃんが亡くなってから、すっかり弱くなったおじいちゃんは家を出て、施設に行くと言った。
「‥あいつには子供の居ない姉がアメリカで1人で住んでいる。あいつに万が一があった時には、その姉の面倒を見ると約束していた。お前の叔母だ、すまないがアメリカに行ってくれ。」

聞けば、おばあちゃんの姉も体調を崩しているという。
いきなり仁美の家族にアメリカ行きの指令が下った。
そこからは毎日家族会議をした。
仁美の大学や就職は日本でしたい意思を尊重し、仁美の預け先の手配をした。

真っ先に、流川の家にお願いをした。
「‥うちはいいけど、楓、仁美ちゃんの事好きだと思うけど、良いの？」
もちろん却下になった。
仁美の親が持っている不動産のアパートに1人暮らしも考えたが、それならかなでの所有物件でこっちに来ないかと提案された。

大人が近くにいた方がよいと、結果1週間前に、仁美の両親は日本をたった。
慌ただしかったなぁ、仁美は食器を片付けながら、最近を振り返っていた。

流川が学ランに袖を通して、やっと2人は家を出た。