仁美は、何ども鳴らしているLINEと既読にならないトークを見てイライラしていた。
「もう！入学式そうそう遅刻しちゃうじゃない！」
そう言って、湘北の制服のジャケットを羽織った。

そのまま急いで、1人で暮らしている部屋のドアを閉めた。
春から仁美は1人で神奈川に暮らしていた。

走りながら向かった先は、流川の家である。
流川のお母さんの持ちマンションに暮らしている仁美は、比較的流川の家から近い物件に住んでいた。

閑静な住宅街に、流川の家はあった。
仁美は預かっていた鍵を鞄から出して、慣れたようにその家に入っていった。
流川の家は共働きで、この時間だと両親共もう家にはいない。

仁美は足音を気にしないで、一気に流川の部屋まで駆け登った。
「楓起きて！遅刻だよ！」
まだ寝ている流川の布団を引き剥がしながら、仁美は言った。
（絶対この為に鍵よこしたな、かなでさん）

流川の母親の企みをやっと理解し、まだ寝ぼけている流川を見ていた。
「‥下で待ってるから、早く用意して」

朝練をして、二度寝をしていただろう流川を置いて、仁美はリビングで待っていた。