頭でも撫でてやるか、いややめておこう。
今更自分も辛くなるだけだ。
このままそっと卒業して、離れるのがお互いの最善なのだろう。

だからお願いだ、早く、どうか早くこの気持ちを無くして欲しかった。

そのまま仙道と仁美はお互い歩き出した。
それが2人が中学時代に交わした最後の言葉だった。

3月。
風に散っていく桜を見ながら、仙道は初めて仁美と会った日の事を思い出していた。
仙道の学ランのボタンは、全て引きちぎられ、写メの嵐で、感情に浸る暇もない卒業式になった。

バスケ部の後輩にも囲まれたが、その場に仁美は居なかった。
顔を見たかったよ様な見たく無かった様な、仙道は複雑な気持ちだった。

ふと、仁美の２年の教室を見た。
窓から仁美がこっちを見ているのが分かった。
仁美も仙道に気が付いたのか、笑って手を振っている。