部活を引退してからは、仙道と仁美は全く面識が無くなった。
それでもたまに仁美を見かけては、仙道は切なくなったりした。

仁美の周りには変わらず人が居て、その中心で仁美はいつも笑っていた。
その笑顔がたまらなく好きだ。

部活を引退して、接点が少なくなればこの気持ちも少しは落ち着くかと思った。
しかし実際は、学校帰り体育館のボールの音を聞くだけで仙道は胸が締め付けられる。

自分が居なくなっても新しいチームができ、そこで仁美は何も変わらずマネージャーをしている。
これが自分と仁美の距離なんだと、仙道はかみしめた。

仙道と仁美が再び話しをしたのは、もう冬になってからだ。
たまたま廊下でお互い1人で歩いている時に出会した。
仁美は仙道を見つけると、びっくりしたような顔をしたが、すぐ笑った。
そんな仁美を見て、仙道もつられて笑顔になった。

「お久しぶりです。先輩。」
たたたっと仁美は小走りで仙道に近づいた。
その光景が久しぶりで、仙道の感情は揺さぶられるが、笑顔で誤魔化していた。

「‥先輩、陵南高校決まったんですね。おめでとうございます‥」
「‥ありがとう‥」
強い高校ですね、と仁美は喜んでくれた。
少し寂しそうに見えるのは、勘違いじゃないだろう。