「‥楓を見つけた時声をかけようとして、一瞬迷ったの‥マネージャーさんと話してる楓が何か私の知ってる楓じゃ無かったみたいで‥」
綾子と話している流川は、確かにいつもより表情もあるし、よく喋る方だった。

流川は仁美とは普通に喋るし、笑ったりもするが、それが何年も自分だけだった。
他の人に自分に近い様に喋る流川を見て戸惑ったと。

「‥‥‥。」
流川はどう返事をすれば良いから分からなかった。
「‥確かに先輩は話しやすい‥」
とりあえず思った事を言ってみた。
先輩なんだと仁美は呟いた。

やきもちを焼いているのか？とも思ったがそういう訳でも無さそうだ。
むしろ仁美自身、自分の感情を整理していないみたいだ。

その後は何でもない会話をして、電話を切った。
切った電話なら前で、東京と神奈川が遠いと流川は思った。
聞きたい事があっても顔を見ながら話せない。
仁美が何を考えているのか、言葉だけでは到底分からなかった。