全国の会場で流川は仁美を探した。
学校名は分かるがジャージ姿ばかりでは、探すのは難しかった。
試合前のウォーミングアップの練習が終わり、一旦コートを離れて、コート脇で試合を見ていた。

廊下に居る部員が急にざわめき出し、流川はその方向を向いた。
「楓。」
聞き慣れた声が流川に届く。
にっこり笑って仁美は小走りでやって来た。

仁美の綺麗さに見惚れていた部員は、流川の名前を呼び捨てにして、親そうに近づいてきた事に驚いた。
2人は部員の注目の的だった。
流川を見に来ていた、ファンの女の子達も遠巻きにざわめき出した。

「楓の事すぐ分かった。あっ、リストバンド使ってくれてるんだ。」
仁美は嬉しそうに流川の腕を触った。
「次試合だから楓の試合見れないけど、頑張ってね。」
仁美はそう言って、颯爽に自分のチームへ向かった。
わざわざ流川を探して来てくれたのだと、流川はすぐ分かり、嬉しかった。
（負ける気しねぇ）
流川に気合いが入った。

「おい流川！今の子が彼女か！？」
周りにいた先輩達に、流川は囲まれた。
羨ましいとか叫ばれたが、流川は返事をしなかった。