「楓！昨日仁美が彼氏連れて来たんだぜ！」
流川の動きが明らかに止まった。
敢えてその話題を出していない大人たちの空気も凍った。
成り行きを大人しく見守っていた。

「だから彼氏じゃ無いって、学校の先輩」
仁美はため息を吐きながら呆れた様に言った。
いい加減な事言わないのと、男の子を小突くと、本人は悪戯っ子の様に笑って2人から離れた。
それを見送って、仁美はもう一度小さいため息をつく。

聞かなくても、それはあの大きな学ランの持ち主で、バスケ部の先輩という事はわかった。
チラチラ目に入ってくるその男の影に、流川は腹立ちさを感じる。
「わざわざ元旦に会ってたの？」
「ん？紗栄子と初詣でに行ったらたまたま会っただけだよ。」
友達と一緒だった事に、流川は少しほっとした。

せっかく貰ったプレゼントを握り潰してしまってた。
色々聞きたい事はあるが、流川はぐっと堪えた。

食事の後、流川はいつも通り庭に出てバスケットを始めた。
軽く後片付けを終わらせた仁美も、いつもの様に縁側で流川のプレイを見ていた。

どんどん上手になっている流川に、仁美は胸が痛くなる程締め付けられた。
この感情を何と言っていいのか、仁美には分からなかった。