「‥凄かったですね、沢北さんのプレイ」
去っていく男を眺めながら、人は言った。
「沢北っていうの？あいつ」
「‥‥。」
試合が終わったら、興味が無くなるのか、仙道はきっと名前を忘れるだろうなと仁美は思った。

東京に戻った仙道には、近辺のバスケ強豪校からのスカウトがかなり来ていた。
何度が監督と話し合いをし、実際に高校に出向いたりもした。

こうして3年の初めての公式戦はかなりの功績を残した。

3年になり、急に進路の話が出て来たが、仙道はあらかた神奈川の陵南高校への推薦を決めていた。
神奈川へ行く事になったら、間違いなく高校は仁美と離れるだろうと寂しくなった。

出逢ってたった１年しかたってないのに、もう何年も片思いをしている様だった。
（楽しかったけど、いつかははっきりさせて終わらせないとな）
仙道はそのいつかをまだ決められないでいた。

3年の最後の夏の大会まで、仙道はサボる事なく毎日部活に出ていた。
練習では仙道にかなうチームメイトはいなく、仙道にはいつも三人が付いていた。
それでも仙道は三人をかわし、得点を取っていた。

夏休み前に予選が終わり、今回も一位通過で全国が決まった。
去年仁美と交わした約束を守る事が出来た。

試合が終わり、ベンチを振り返ると、去年とは違い、仁美は嬉しそうに号泣して、マネージャー同士と抱き合っていた。