「その『楓』君は今居ないの？」
「楓の家は、1日は家族で過ごしてますよ、楓の誕生日なんで、来るとしたら明日からです。」
仙道は流川のめでたい誕生日に驚いた。

「俺、2月14日なんだけど、チョコくれる？」
ついでに自分の誕生日のアピールもした。
言われた仁美は訝しげな顔をして仙道を見た。
「‥そんな日にそんな意味ありげな物あげたくありません。」
キッパリと仁美は断った。

しっかりしたお膳立てなのに、何て脈の無い返事なんだろうと仙道はがっかりした。

それでもこうして家まで上がったのは、きっと仙道だけだろう。
出逢ってから、確実に仲良くなっていると仙道は確信している。
焦って告白して、今の関係を壊したく無かった。

それでも時折、本当に一瞬だけど、仁美も仙道が好きなんじゃないかと思える時もある。
今日もそうだ、どうでも良かったら、相談に乗ろうとしてくれないだろ？
そんな些細な仁美の、行動に期待してしまうのだ。

その日は結局、たわいの無い話をして、仙道は帰路にたった。
だけど、とても楽しい時間だった。