なのにその仁美が、俺がオフェンスの際ゴール下に切り込もうと前に重心をかけた際、身体同士のぶつかり合いの時に、仁美は尻餅を着いた。

全てがスローモーションに見えた。
押し除けた仁美を抜けて、俺はボールをゴールに入れた。
その時の驚いた様な、ショックを受けた様な、大きな目を見開いて仁美は俺を見ていた。

今までの俺たちとは何かが変わった瞬間だった。
お互いにそう感じたが、その時の俺たちは2人共その現実から目を背けた。

その後、仁美は何事も無かった様に、俺に挑んできた。
俺はそんな仁美に安心したのを覚えている。

そして小学5年生の夏。
いつも通りバスケットボールを持って向かった仁美の家で、俺を迎えていたのは髪を肩まで伸ばして、白いワンピースを着ていた仁美だった。

仁美は今までショートカットで、ボーイッシュな女の子だった。
バスケをする際に邪魔な物は全て排除して、夏は短パンとTシャツ姿しか見た事が無かった。

初めて見る仁美に、俺は目を奪われた。

仁美のお父さんがバスケット選手として活躍出来たのはアメリカ人とのハーフという好条件が揃ってという事もあった。
仁美はクウォーターという事になる。

今までのバスケットをやるためだけに得ていた仁美の身体は、バスケットから離れた姿形は今まで俺が見てきた仁美とは、別の女の子に見えた。