しばらくおばあちゃんに挨拶をして、流川はゆっくりと腰を上げた。
広間を見渡したが仁美が居なかった。
朝から接待の手伝いをし、今は自分の部屋で休んでると言う事だった。

流川は二階にある仁美の部屋へ向かった。
扉の前に行くと、ノックをした。
しばらくしても声が掛からなかったので、流川は声をかけた。
「仁美、開けるよ」
返事が来る前にドアを開けると、仁美は床に座って頭をベットに埋れさせていた。

仁美が寝ていないと分かるのは、肩が微妙に震えていて、泣いているのが分かったからだ。
流川は仁美の横に腰を落とした。
仁美は声を殺して泣いていた。

「仁美‥」
流川は仁美の肩に手を置いて、自分の方に向かわせた。
仁美は体は流川の方に向いたが、顔は流川に見せようとしなかった。
流川はそのまま仁美を抱きしめた。

身長はあるのに華奢な仁美の肩は、流川が思った以上に細かった。
そんな肩が震えていると、流川も急におばあちゃんの記憶が走馬灯のように思い出されてくる。

涙が出そうになるのを流川も必死で堪えた。
我慢する度に、仁美を抱いている腕に力が入る。
「っ楓‥」
流川が泣くのを我慢しているのがわかるから、仁美は余計に涙が抑えられなかった。

仁美は大きな流川の背中に手を回した。
「‥楓、私達は半身で、親戚のままだよね。あの頃から何も変わってないよね。」
仁美は泣きながら流川に聞いた。