仙道の腕の強さと大好きな匂いで頭がクラクラする様だった。
ずっと恋焦がれていた人が自分の腕の中にいるのだ。

「先輩‥私‥。」
仙道の大きな肩を抱いたまま仁美は言った。
愛しい人の声が耳元に聞こえる。
それだけで涙が出てしまう。
「‥言わないで。」
仙道のその言葉で2人は少し離れてお互いの顔を見つめる。

「俺に言わせて。」
仙道はうっすら涙が出ている様に見えた。
それが自分の瞳が潤んで見えたものかは仁美には判断がつかなかった。
その仙道の切なそうな顔を見た瞬間、また胸が締め付けられて涙が出てしまったからだ。

「‥あの時言えなくてごめん。」
「負けたって手放せる訳なんて無かった。」
仙道が真っ直ぐ見てくれるので、仁美は涙、嗚咽を堪えるのに一生懸命になる。
もうこれ以上泣かせないで欲しい。

「試合に勝って言えなくて情けないけど、俺には仁美が必要なんだ、ずっと。
これからも側に居て欲しい。」
ずっと聞きたかったその言葉を聞けた時、仁美は堪えきれなくなって涙が流れた。
「っはい！」

そう言って仁美は再び仙道に抱きつく。
やっと言えたと、耳元で仙道の声がした。
泣き過ぎてぐちゃぐちゃの顔になったが、とても幸せな気持ちで何度も何度もキスをした。