帰りの終電があるかとか、そんな事はどうでも良かった。
ー逢いたい。
ただそれだけだ。

仁美は流川との通話を切って振り返る。
流川は切れたスマホを耳から外して空を見た。
さっきまで花火の明るさで見えなかった月が、明るく光って見えた。
どうか仁美が笑顔で居られる様に。
流川はどうしてもそう願ってしまうのだ。

勢いよく振り返ったその視線の先に仙道が居て、仁美は目を見開いて凝視した。
ここにどうして仙道が居るか、頭がおいついていない。
仙道は走って来たのか少し息が上がっている様だった。

仙道は息を整えて仁美を見ているが、言葉を発する事はしなかった。
仁美はゆっくり仙道の方へ体を向けて、その様子をずっと見ていた。

今目の前に何故仙道が居るのか、突然現れた仙道にそんな事を考える余裕なんてなかった。
どの位会ってなかったっけ？
少し痩せた？

仙道を見つけて、あの別れを思い出し、最初は胸がギュッと苦しくなった。
だけどすぐに愛しさが体中を巡り、久しぶりにみる仙道に涙が出そうになった。