ー仁美に好きな奴が居る事より会えない事の方が辛い

流川はポケットからスマホを出して、仁美の名前を出す。
耳元に当たると呼び出し音が聞こえた。
今、仁美の隣に行き、伝えたい事があるんだ。

仁美の巾着の中からは、流川の着信が鳴っていた。
しかし花火会場の中ではその音で、着信が仁美に聞こえる事は無かった。
それでも流川と、同じ花火を違う場所で見ながら仁美も流川を思う。

ー本当はずっと楓が好きだった。
仙道と想いが通じ合った日に、同時に強く感じた流川への想い。
ー俺の事はいつから好きだった？
流川にその想いを気付かれていても言葉には決してしてこなかった。

それでもずっと側に寄り添ってくれた楓。
花火を見ていてもずっと流川との思い出が浮かんでくる。
胸の痛みはいつの間にか流川を思えば消えていく。
流川は仁美にとってずっとそんな存在だ。

仁美は花火の音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。
ずっと楓に伝えたい言葉があったんだ。