流川は花火大会へ仁美を追いかける事も出来なく、家で待っている事も出来ずに外を歩いていた。
花火大会が始まる前はまだ少し明るかった。

仁美に連絡をしようかスマホを眺めながらずっと迷いながら、田舎の道を歩いてる。
すぐ隣は田んぼでカエルの鳴き声が異様に大きく聞こえる。

少し先にバラバラと年配の人だかりが見えた。
流川が横を通ろうとすると、お婆ちゃんが話しかけてきた。
「お兄ちゃん、花火見るならあんな人混みの中に行かなくてもここから見えるぞ。」

どうやらここから花火が見えるらしい。
ご老人達は、花火会場へ行くのが大変なのでいつもここで見ているという。
ーここなら花火が終わったのが分かるか。

花火会場へ行っても、人の多さで会えるか分からない。
ここなら駅を通り越して民家の帰り道なのでちょうど人もばらけ、帰りの仁美を見つけやすいと流川は思った。

用意してもらった簡易的な椅子に、会釈をしながら腰を掛け、スマホを見たその瞬間19時になり、まだ薄ら明るい空に花火が上がった。
流川はその音に顔を上げる。