でも本当は、ずっと仁美の笑顔を思い出したかった。
ずっと仁美の笑顔が見たかったんだ。
その感情が胸を押しつぶして、痛いぐらいで仙道は自分の胸を抑える。

感情が爆発しそうな瞬間、ドンと大きな音と共に花火が打ち上がり、夜空に散った。
会場まで来ましたまだあるが、人混みは一瞬足を止め、周りから歓声が上がった。

その歓声と次々上がる花火の光景が、あの時の光景と重なる。
隣にいるはずのない仁美の残像が、気配が仙道を覆った時、目の前に広がったのは今見ている光景ではなく、河川敷で仁美と見たあの花火の光景だった。

花火が上がり、歓声を上げた仁美を見た時、仁美はとても楽しそうに笑っていた。
その笑顔が花火より綺麗で、仙道は思わず仁美の手を握ったんだ。

仁美の笑顔がどんどん溢れて来て、涙が出そうになるのを理性で抑えると、仙道は走り出した。
この会場の何処かにいる仁美を探して。

人混みをかき分けるので、思ったよりも前に進まない。

頭の中は、ずっと思い出せなかった仁美との思い出が堰を切ったように溢れ出してくる。
初めて仁美を見かけた入学式。
バスケ部のマネージャーの仁美との思い出。
再会して流川が隣にいる仁美。
好きだと答えてくれた仁美。