最寄駅に着いて駅内を出ると後ろから声をかけられた。
懐かしい声に振り返ると、そこには中学の時の同級生の寺内が居た。
寺内は久しぶりに会う仙道に笑顔で寄ってきた。
仙道も久しぶりの友人に笑顔になり、2人はしばらくそこで会話する。

寺内は花火大会に一緒に行く彼女を迎えに来たらしい。
中学の同級生に彼女が出来てるなんて変な気分だった。
彼女が来たらお邪魔だろうと、仙道はもう行くという合図を寺内に送り、背を向けた。

仙道が背を向けた途端に、寺内が思い出した様に仙道に言った。
「マネージャーだった上條覚えてる？あの子もさっき見かけたよ。」
久しぶりに聞いた仁美の名字に、明らかに仙道の胸は潰される様な大きな痛みを覚えた。

寺内に背を向けたままなので、彼は仙道がどんな顔をしているか確認できなかった。
もし出来ていたら、仙道の顔色を心配するだろう。
仁美は1人で花火会場に向かっていたと、嬉々として寺内は話続ける。

久しぶりに仁美を見て、浴衣姿が相変わらず綺麗で寺内はしばらくはそのまま仁美を見送ったようだ。
仙道は真帆から貰った仁美の浴衣姿の写メが、脳裏に浮かんだ。
しかし、その姿の顔はのっぺらぼうの様に思い出されない。

笑顔だったはずだ。
その浴衣の写メは何度も見てしまうくらい、笑顔が綺麗な仁美が写っていたはずだった。
なのに仙道はその笑顔を思い出せなかった。