流川と仙道とも同じ道を歩いたはずなのに、どんどん思い出されてくるのは、仙道と一緒に行ったあの日の事だった。
何故人はわざと胸をえぐる様な思いに身をおいてまで、思い出に触れてしまうのだろう。

でもどうしてもしたかった。
思い出に身を置いて、傷付くという行為で仙道との思い出を清算出来たなら、もう前を向いてもいいと、自分に後押し出来る様な気がした。

仙道との思い出が脳裏をかける。
大好きだった仙道の笑顔しか思い出されない。
ー涙は出ない。大丈夫だ。
楽しい事も沢山あった、辛い記憶だけじゃない。
仁美はそっと目を閉じた。


実家に帰る電車に乗り換えた瞬間いつもより人が多い事に気が付いた。
目の前の広告に花火大会のポスターを見つける。
今日が花火大会という事を思い出した。
仙道はすぐにポスターから目を逸らす。

仙道にとっては仁美を思い出す事は辛い苦行でしかなく、思い出の全ては思い返す事のない様に心に鍵をかけて決して開けない様にしている。

それでも夢を見ればどうしても仁美が出てきてしまう。
そんな毎日の繰り返しだ。