広間には大分親戚が集まって来ていて、15時位には大人は賑やかになっていた。
仁美は自分の部屋で、実家に置きっぱなしだった洋服の選別を兼ねた風通しをしていた。
庭からはボールの弾く音が響いていた。

ボールとは違う乾いた音が空に響いた。
仁美が窓を見ると、続けて空砲の音が響いた。
今日が花火大会という事を思い出した。

仁美は空砲の音を聞き終わると、ゆっくりと立ち上がった。
台所にいる母親の元へ向かうと、忙しくしている彼女に声をかえた。
「お母さん、浴衣はすぐ出せる？」

母親は少し驚いたが、あと少しで手が空くので浴衣を出してくれると言った。
そのまま広間に行き、縁側まで出ると、バスケをしている流川を見つめる。

流川とも仙道とも一緒に行った事のある花火大会。
仁美は2人と行った記憶を思い返す。
最後に見た花火は仙道が隣に居た。
もう2度と見ないと思っていた花火だが、仁美は見に行こうと思った。

そう思う様になれたのは、流川のおかげかなと、仁美は流川を見ながら思った。