仁美は出来るだけ簡潔に事の成り行きを説明した。
詳しく話せばまた涙が出てしまいそうだ。

「仁美ちゃんて楓と付き合ってるの？」
かなでが困惑した顔で聞く。
仁美はゆっくり首を振る。
「‥予選リーグからインターハイ終わって戻ってきた今日まで話してない。」

かなでは不思議そうな顔をして話し出した。
「‥楓が急にアメリカに留学したいって言い出したのよ。さっきの話聞いててっきり仁美ちゃんと真里さん達の所に行きたいって話だと思った。」
流川が留学したいとは初めて聞いた。

果たしてそれが自分の為だと言われると仁美は疑問だった。
流川なら自分の為にアメリカに行くだろう。

「皆んな一生懸命頑張ったのね。」
真里は仁美の話を聞いて微笑んで言った。
仁美はそんな母親を見て頷いた。
皆んな一生懸命だったんだ、それだけは時間と共に分かる様になっていた。

そして時間は確実に仁美の気持ちを癒してくれていた。
もうあの時の様にどうしようもなく涙が出る事は無くなっていた。
それでも毎日思い出してしまう。

ー先輩は今何をしているのだろう。