仁美は明らかに険しい顔になり流川をみる。
「来ると思ってたよ。」
流川に仙道が言った。
今ここで清算を行おうと言うのだろうか。
まだ自分の気持ちを伝えてもいないのに。

「‥先輩私は。」
仙道に向かおうとする仁美の腕を流川が掴む。
それを黙って仙道は見ていた。
「っ離して楓！」
仁美はあからさまに不快な顔をして流川を見るが、流川はその手の力を緩めようとはしなかった。

この状況が理解出来なかった。
理解出来ないのに、何も言ってこない仙道だけが鮮明に目に映るのだ。
仁美は大きな目を見開いて仙道を見る。
目に溜めきらなかった涙が流れる。

「私の気持ちは？」
仙道に聞くが何も答えない。
「じゃあ先輩の気持ちは？」
仁美にそう言われて、少しだけ仙道の表情が変わるが、すぐにその気配を消す。

ー先輩はいつもふざけて笑っているけど、バスケだけは真剣で、たまにサボったりもするけどコートに立てば先輩以上のカリスマ性を持つ人を見た事が無い。

プライドが高くて出る芽には練習試合の時の様に明らかに力の差があっても全力で倒しにくる。
凄く大人っぽく見えるが、プレイでは流川が練習してきた技でもコピーして見せてしまう位大人気無い部分もある。

全てが自分が1番と自負しているからだ。
それが先輩で、それが先輩のプレイの魅力なのだ。
そんな先輩が誰よりも好きなんだ。
だけどー