だから次の日、陵南が負けた時は今までのどんな試合よりも悲しかった。
歓喜の上がる湘北を見ながら、ただただ目の前の現実が信じられなくて、夢を見ている様だった。

悲しくて涙が出た訳ではなく、悔しくて涙が出た。
あまりにも悔しくて、喜ぶ湘北を見て、流川におめでとうという気持ちにもなれなかった。
言葉では言えるだろう、だけどそれに気持ちは入っていないだろう。

そんな言葉を流川に言いたくなく、仁美は流川を見る事が出来なかった。
今はただ、目を合わせてくれなく、控室に戻った仙道が気になってしょうがなかった。
昨日の負けとは訳が違う。
仙道のー陵南の夏が終わったのだから。

それでも表彰式に出てきた仙道は堂々と前だけを見ていた。
ベスト5に選ばれた時は沢山の拍手をもらっていた。
仁美はその姿に嬉しくて涙が出そうになった。

ー早く先輩に会いたい。
でもそう思っていたのは、私だけだったのだろうか。
会うなら何処が良いか。
仙道の家でもいい、早く2人になりたかった。

流石に今日は部活は早く解散出来たみたいだ。
仙道と仁美は駅で待ち合わせする。
向かってくる仙道に仁美は笑顔で迎える。
自分を見て笑顔でいる仙道に違和感が覚えた。
その笑顔がいつも自分に向けている笑顔では無かった。