明日どっちが勝っても、気持ちは決まっていた。
そして、この状況で勝って欲しいと思えるのは仙道だった。
もっと胸が裂ける様な気持ちになるのだと思っていた。
さっき陵南が負けて、明日全てが決まると分かった時に、仙道が負ける姿が想像出来なかった。

「絶対勝つよ。」
仙道はそう言って仁美の頬に手を当てる。
仙道の顔が近づいてきたので、仁美は目を瞑り仙道を受け入れる。
仙道とキスをしながら、仁美はこれまでの仙道との思い出を思い返していた。
応援したいのは、好きなのは仙道でそれは変わらない。

仁美はこれでやっと流川への気持ちを手放せた。
どちらかを選ばなければならない時に、流川を選べない。
もうこれ以上引きずるわけにはいかなかった。

ー明日試合の前に楓に話そう。
それで楓のプレイが変わるとは思わない。
元々自分が選ぶ様な立場になんていないんだ。
流川と過ごしてきた今までの時間は、決して色褪せない。

何度も何度も流川を好きだと思った。
その手を取って大切にしたいと願った。
それでもその度に思い出せるのは仙道で、ずっとその気持ちに蓋をしていた。