自分の家に着いた瞬間、今まで張り詰めていた気持ちが緩んだ。
懐かしい匂い、何も変わって居ない光景。
仁美は車から降りて大きく息を吸った。

「おかえりなさい。」
背後に懐かしい人の声がする。
仁美は勢いよく振り向いて、その声の人物を確認する。
大きい目をさらに大きくさせて、仁美は目一杯に溜まった涙を流しながらその人物に向かって走る。

「っお母さん！」
子供の様に泣きながら抱きつく仁美を笑顔で抱きしめる。
玄関から父親も出てきて、妻と娘の肩を抱く。
流川は久しぶりに見た、子供の仁美の姿を見て安心した。

大人ぶって見えるが、やはりまだ16歳の子供で、この半年親と離れていた事で寂しい思いを沢山したに違いない。
決して流川や他には見せない弱い部分をこうしてさらけ出せている事にほっとしたのだ。

ただ母親にすがっているのは、寂しさだけだろうか。
母親は仁美の姿を見て、仁美が何か話したがっていると思った。
それは父親や他の人がいては出来ない話だろう。

仁美の肩を抱き、一緒に仁美の荷物を持って仁美の部屋へ移動する。
それを見送りながら流川は自分の荷物も客間に移動する。
習慣の様に庭のゴールを見ると、ボールを取り出しバスケットを始める。