ー楓が負ける姿は想像出来ないなぁ、楓は私の半身だから。
昔自分が流川に向かって言った言葉を思い出す。

「‥俺はこの沈黙の時に、仁美がいつも誰を思い出しているか分かる。」
仙道は悲しそうな顔をして笑って見せた。
「そいつを1ミリも2人の間に入れたくない。」
「覚悟を決めて欲しい、言葉だけじゃ無い、結果が出た時仁美の前から居なくなるのは負けた奴だ。」

ーそんなのはもう決まっている。
仙道に叫ぶ事が出来るならどれほどよいか。
叫べない自分が、どれほど流川に囚われているかを思い知る。

「‥先輩。」
仁美の目から涙が出る。
「決勝リーグでどこを応援するかは強要する気はない。仁美が応援したい所を応援すればいい。」
「私が応援するのは先輩だけです。」
仁美がそう言うと、仙道は微笑んで仁美の頭を撫でる。
その手は仁美の頬に向かい、仁美は仙道の手をにぎる。

「じゃあ負けるわけにはいかないな。」
仙道はいつもの笑顔で仁美に言う。
仁美は目に涙を溜めて、仙道に抱きつく。

運命を決める決勝リーグが始まろうとしていた。