そしてこの時間が、陵南戦が終わるまでの流川との最後の時間になった。

湘北高校vs翔陽高校戦。

その日は流石に予選とはいえ、今までにない観客の数だった。
翔陽高校はベンチ入り出来ていない選手が二階席を埋めていた。

翔陽高校の応援だけで圧倒されそうだ。
まるで湘北高校の応援席が無いような気がして、仁美は空いている席を探した。
かろうじて前の席を取れたが、圧倒的な応援の前に緊張しっぱなしだった。

ゴール近くの席で、よくコートが見える。
両校の生徒がコートに入って来た。
翔陽高校の背の高さにまた圧倒される。
とても大きいチームで三井までもが小さく見える位だった。
元々湘北は背の高いチームではない。

流川が仁美に気が付いて目が合う。
仁美の目には流川は落ち着いている様に見えた。
だけど、全体的にチームが硬くなっている気がする。
ベンチ陣は明らかに圧倒されている様子だ。

仁美も緊張を抑えながら見ると、急に肩を叩かれた。
飛び上がる様に叫んで振り返ると、そこには仁美のその行動にびっくりしている仙道がいた。
仙道は笑って仁美の手を取った。
仁美は恥ずかしくなり、赤面している。