何だか、プレイを見て好きになったと言われるよりショックを受けた気分だった。
流川は大きなため息を吐いて、一緒に色々な思いも吐き出した。
それは長いため息だったので、仁美は申し訳無さそうに流川を見た。

仁美を見つめていた流川と目が合う。
流川が真剣に見てくるものだから、思わず胸が高鳴った。
「‥俺は？」
「え？」
「俺の事はいつ好きになった？」

流川の言葉に時間が止まった様だった。
言った事の無いその想い。
絶対に言葉にしてはいけない。
この答えに応じる事は出来ないのだ。

「‥言うの？」
流川は頷く。
「本当の事は言わないかもよ。」
悲しそうな顔で仁美は笑った。
次の言葉を発したら仁美が泣くと流川には分かった。

仁美が言葉を発しそうになった瞬間、流川の右手が仁美の口を塞いだ。
発しなかった言葉の代わりに、流川の手に仁美の涙が流れた。
「‥言わせてごめん。」

そう言って、流川は仁美を抱きしめた。
流川に抱きしめられて、仁美は涙が抑えられなくなり、声を出して泣いた。

この関係を清算するためにこの時間が必要ならば、誰の為の時間なのだろうか。
流川はただ仁美と仙道の為に付き合ってくれているのだろうか。
流川の腕の中で、流川が本当は仁美に関しては勝負なんてしていないと仁美は分かっていた。

そして仙道もただ純粋に勝利の為だけに。
この時間は仁美の為の時間だと気付かされたのだった。