仙道はまたそのさくらんぼの様な赤い唇に吸い付く。
仁美の頬に触れている仙道の手に仁美が流した涙が付いた。
仙道は目を開けて仁美を見る。

仁美は泣いていた。
「‥どうして泣いているの？」
仙道は優しく仁美の顔を拭いながら聞いた。
「‥分からない‥」

今日会えて嬉しくて、流川を思い、仙道を思い切なくて、だけども気持ちははっきり決まっていた。
その気持ちを仙道に伝える事が出来ず苦しい。
「‥先輩、離さないで下さい。」
泣きながら仙道にしがみ付く。

「‥俺が負けると思う？」
仁美は大きく首を振る。
「離さないよ。勝って全国行くから。」
はいと小さい声で言う仁美に、仙道は笑顔で抱きしめた。

「週末のシード戦見に来てよ。」
「‥絶対行きます。」
仁美の涙が乾くまで、仙道は仁美を抱きしめていた。

離れ難いが、ずっとこうしている訳にはいかず、仙道は仁美をそっと引き離した。
「‥そろそろ行こうか。」
仁美が不安にならない様に仙道は笑顔で言う。
そんな仙道の気遣いが分かり、仁美もまた仙道に笑顔で返した。

2人で歩き出し、仙道は再び勝利への決意を強く誓った。