今日流川は高校バスケ界に衝撃的なデビューをするだろう。
最近の流川の練習を思い出しながら、仁美は隣に立っている流川を横目で見ながらそう考えていた。

本当にどこまで伸びるのか、計り知れないスピードで流川は成長していた。
電車が来て、2人はドアの横に向かい合う様に立った。
仁美の目の前は流川の胸元だった。

仁美は目線を上に上げて流川の顔を見た。
電車の外を見ていた流川は仁美の視線に気がつくと仁美を見た。
何で見られているのか不思議そうな顔をしている。
そんな流川を見て、なんだか流川より自分の方が緊張している様で仁美は笑った。

何で仁美が笑ったのか流川は分からなかったが、仁美の笑顔を見て、流川もまたつられて笑顔になる。
その流川の笑顔を見て、胸が締め付けられる。

ー頑張って
喉まで言葉が出かかっていた。
それを言ってしまったら、後からお互い辛くなると分かっているので言葉になる事はない。

流川は再び仁美から目線を外し、外の景色を見た。
仁美も流れる景色に目をやる。
言葉にしなくても流川も仁美も言いたい言葉はお互い分かっていた。