「‥馬鹿だよ」
2人共。
そう言って仁美は顔を手で覆い泣いた。
仙道の前では泣けないが、流川の前ではどうしてこんなに涙が出るのだろう。

流川はそんな仁美を見て、今度こそ手を伸ばして仁美の肩を抱き、抱きしめた。
仁美は抵抗する事なく、流川の腕の中に収まった。
仁美は怒りをぶつけるように、流川の胸を拳で泣きながら叩く。

言いようの無いこの怒りを、仁美は泣きながら流川にぶつけた。
流川はそんな仁美を受け止める様に抱きしめる腕に力を込める。
そして心の中で仁美に謝っていた。

「こんな風に泣かせてごめん。
これが最後だから、決着をつけさせて欲しい。」
仙道にも同じ様な事を言われて、仁美は2人の気持ちは分かる。
だけど、そんな風に2人にさせてしまっている自分も、自分の気持ちを無視して2人で決めてしまっている事にも、何が原因かなんて分からない。
ただただ切なくて、悲しくて、悔しいのだ。

流川は仁美が落ち着くまで抱きしめていた。
だんだん仁美の嗚咽が小さくなり、もう流川を殴る手は止まっていた。
それを確認して、流川は仁美を引き離す。

「必ず俺が連れて行く。」
そう言って流川は、自転車に乗って帰って行った。