帰りの電車に揺られながら、仁美は今日仙道と話した事を思い出していた。
流川との事がこんなにも仙道を傷つけていたと、改めて思い知った。
仁美は仙道の前で出せなかった涙を流す。
声を殺して、ただひたすら涙を流していた。

今日、自分が言おうとした事を仙道に言われたのだ。
流川との事をちゃんと決着をつけるから、待っていて欲しいと、そう仙道に話すつもりだった。
言われる方がこんなに辛いなら、自分は言わなくて良かったと思った。

陵南高校に行った時、体育館には沢山の仙道のファンがいた。
流川より多い位だった。
中学時代から仙道の人気ぶりは知っている。
その仙道が自分と付き合っている事自体、仁美にとっては現実味のない夢の様だった。

ずっと大好きだった仙道があの日同じ様に好きだと言ってくれた。
あの瞬間すごく幸せで、これからどんなに辛い事があっても、乗り越えられるのではないかと思った。

最寄駅に降りて、フラフラとマンションまで向かう。
いつもより帰り道の時間がかかる。
意識せずに帰ってきたマンションの前に、流川が居た。