花火会場は、川の河川敷だった。
芝生の座れるスペースは既に人がいっぱいで、流川達は河川敷から少し離れた土手から立ち見になる。
花火会場に着いても、叔母達とは合流出来なかった。

2人の手はまだ繋がれたままだった。

普段よく喋る仁美が、今は何も喋らない。
それは緊張のせいだと、仁美の表情を見れば分かった。
（男と意識した事ないなら、今しっかりしろどあほうが。）
未だに真っ赤になってる仁美を見て、流川はそう思った。

自分が感じる様に、胸が痛くなったり、何気ない会話や相手の仕草で幸せになったり、同じ様に感じれば良いのに。
流川はこの気持ちを伝えたら、仁美は何と答えるか疑問に思った。

音楽がなり、最初の花火が上がった。
周りからは歓声がどっと上がった。
2人も顔を上げた。
近くから上がっているみたいで、大きな花火が目の前で散った。

仁美を見ると、綺麗な花火を嬉しそうに見ていた。
ーこの仁美の顔が好きだー
その言葉が声に出る事は無かった。
次々に上げられている花火を見て、流川は仁美の手を強く握った。

例え何があっても、この手を離す事はしないと流川は花火を見ながら強く誓った。