仙道は仁美の手を握った。
目を伏せていた仁美が仙道を見る。
「俺は2人が別れない為の時間だと思ってる。」
同じ様に仁美が今不安を持っているなら、和らげてあげたいと思い仙道は言った。

仁美はまた目を伏せた。
泣くのを我慢している様に見えて、抱きしめられない分仙道は握った手を強める。
大切にしたい。
だけど自分のこの嫉妬を解決出来ないと同じ事を繰り返す。

「‥今日だけは一緒に居てもいいですか？」
仁美が自分からそんな事を言うとは思っていなく、仙道はびっくりした。
「‥明日学校は？」
「‥朝、先輩の家から行きます。」

ここまで仁美に言わせるほど不安にさせているのかと胸が痛くなる。
だけど今は一緒に居るのも辛い。
時間が欲しいと再度言うと、仁美は頷いた。
泣くかと思ったが、仁美は泣かなかったが、とても悲しそうな顔をしている。

店を出て駅に向かう道は2人とも喋らなかった。
改札の前で仁美は振り返り仙道を見る。
「‥必ず試合に勝って迎えに行く。」
流川への気持ちに区切りをつける。
2人の為に。

ホームに向かう仁美の背中を見ながら、仙道はそう決意した。