置いて行かれた事に気が付いた仁美は、大きな声で流川を呼んだ。
「楓！」
その声に気が付き、流川は慌てて人の波を逆に戻っていった。

「置いて行かないでよ。」
「仁美がフラフラするから。」
「こういう時は、たまには相手を気にして振り返ったりしてよ」
仁美は怒った顔で拳を作り、軽く流川の胸を小突いた。
何と理不尽なと思いながら、流川はため息を付いた。
そして、その小突いた手を握った。

「こうすればはぐれないだろ。」
流川はそのまま仁美の手を握ったまま歩き始めた。
「楓っ！ちょっと！おばさんもいるし恥ずかしいよ！」
昔は花火大会の日などははぐれないように手を繋いで歩かされたが、さすがに小学生の高学年の頃からしなくなっていた。

「おばさん達とはもうはぐれてる‥」　
そう言われてまえをみるがらもうおばさん達は見えなくなっていた。
流川の手は離れそうも無かった。
仁美がそれ以上は何も言わなかったので、流川はそのまま手を繋いでいた。

小さい時に繋いだ時とは比べられない程、今流川は意識している。
自分と同じ様に、仁美も緊張しているのか、顔を見て確認したいけど、仁美の顔を見る事も恥ずかしくて出来なかった。

握り返してきているのか、分からない位の弱さで仁美の手が触れている。
流川がしっかり握っていないと離れてしまいそうだった。

「‥楓‥喉渇いたからあれ飲みたい‥」
仁美がそう言って止まった屋台には、ジュースやらラムネが売っていた。
そう言われて、流川はやっと仁美を見た。
流川ぎ見た仁美は、顔を真っ赤にして俯いてた。

自分以上に意識していて赤くなっている仁美に流川は思わず可愛いと思った。
「顔‥真っ赤だな」
流川も大層意識していたが、顔に出ないタイプなので、側から見ていると仁美だけが意識しているように見える。