しばらくしても仁美は泣き止まない。
冷静になって来たのは水戸の方で、何で流川のせいで泣いている仁美を、自分が慰めているのか馬鹿らしくなった。

水戸は仁美の肩を持ち、自分から勢いよく剥がす。
「あのさぁ！本当に気が付いてないの？！」
イライラした様に水戸が言う。
仁美は見当がつかず、キョトンとしていた。

たまらず水戸は続きを言おうとする。
「あんたらさー！」
その瞬間、またもや勢いよく屋上のドアが開いた。
2人がびっくりしてドアの方を見ると、そこには流川が物凄い形相をして立っていた。

驚いて仁美と水戸は固まる。
「‥‥こう言う事だよ。」
水戸は仁美の肩から手を離し、苦笑いしながら言った。
仁美が水戸のその言葉の意味を考える暇なく、流川が勢いよくこちらに向かってくる。

「ちょっ！タンマ！」
2人がかりで水戸に飛びつく流川を止める。
「楓！」
仁美が流川に抱きつき、流川の動きが止まる。
その間に、水戸は流川と距離を取る。

「あのなぁ！誰が泣かしてると思ったんだよ！」
水戸のその言葉に、流川は仁美を見る。
仁美は流川から思わず目を晒して顔を赤くする。
仁美に冷たく接していても、流川の仁美へのアンテナは結局作動していて、この前も今も仁美に何かあればこうして身体が勝手に動く。

そんな流川の思いと、今仁美が泣いている理由は流川だと言う事。
2人は状況を把握する。
流川の身体から力が抜けたので、仁美は流川から離れた。