そして拒まれれば傷付き、さっきの台詞は何の感情も無く口から出ていた。
あの日からまだ日が浅く、流川の感情はまだまだ忙しい。
怒り、悲しみ、切なさ、愛しさ全てがまだ鮮明に残っている。

流川が仙道の名前を出した事に、仁美は傷付いたのか、悲しんだのか、流川には分からなかった。
だけど、自分で言った台詞であの日より仁美に気持ちをぶつける事が出来てきている事が分かった。

今はまだ全て話すには辛すぎて出来ないが、もう少ししたら仁美と話しが出来るかもしれない。
流川はそう思った。

ー仁美に好きな奴がいる事より、仁美に会えない方が辛い。
少し前に仁美に言った言葉だった。
流川はまだその気持ちがら変わっていないのを確信する。

仁美は頑固だから、あの日流川より仙道を取ったと思っているから、絶対自分から流川に連絡してこない事を流川は分かっている。
流川が折れない限り、前の様に戻る事は無い。

だけど流川も今回ばかりは折れる気は無い。
仁美は仙道も好きだろうが、流川にだって気持ちがある事は分かってる。
そして自分がそうな様に、仁美も流川が居ない日常に耐えられるはずがないと本気で思っている。

ー早く気付け、どあほうが。
そう心の中で悪態をつきながら、流川は仁美のマンションに背を向けた。