そう言われて、腕が痛い事に気がつく。
無理やり引っ張られたのを拒んでいたせいか、掴まれた所がズキズキしていた。
一瞬目線を腕に落としただけで、流川は気がついた。

流川が袖をまくると掴まれた所が内出血していて、はっきりと手の形になっていた。
あんなに数秒でもこんなにはっきり跡になるんだ。
頭が働かない中、アザを見ながらぼんやり考えていた。

流川はそのアザを見つけると、ゆっくりと自分の唇を近づけて仁美に付いたアザにキスをした。
その光景を仁美はただ見ていた。
安心からの安堵感なのか、その流川の行為のせいか涙が止まらず出てくる。

泣きたい訳でも悲しい訳でも無く、ただ涙が出てくる。
流川はそのまま涙を指で拭うと、今度はそのまま仁美の唇にキスをしようとする。
仁美は流川を見つめたまま、流川の唇と自分の唇の間に手を入れてそれを制した。

流川は一瞬止まったが、そのまま手の甲が仁美の唇に当たるまで押し付ける。
自分の手越しに、流川の唇の感触がする様だった。
仁美は腕を伸ばして、流川を引き離した。

そして体育座りになり、そのまま泣き出した。
自分でも何に泣いているのかよく分からない。
流川はため息を吐き、泣いている仁美をそのまま抱きかかえて立ち上がった。