仁美はそのまま路地に引きずられそうになる。
必死で抵抗するも、何の防御にもならない。
ー誰か助けて！

その瞬間腕を掴んでいた男が目の前で吹っ飛んだ。
びっくりして目を開けると、次は鞄を掴んでいた男が同じ様に吹っ飛ぶ。

仁美は男達の目線の先を見る。
そこにいる人物を確認すると、身体中の力が抜けてその場に崩れ落ちた。
そこには流川が立っていた。

他の男達が流川を確認すると、一斉に殴りかかる。
何発か流川の顔や腹に当たり、思わず仁美は目をつぶる。
それでも呻き声を上がるているのは流川ではなく、相手の様だ。

目をつぶっていても、殴る音や倒れる人間の振動が伝わり手で耳を押さえる。
それでも恐怖は収まらず、心臓が強くうなっていた。
殴り合う音も少なくなり、最後の人が倒れた音が聞こえて、仁美はビクビクしながら目を開けた。

倒れていたのは全て、先程の男達であった。
流川は仁美の目の前まで来ると、かがんで仁美の目線に合わせる。
「‥怪我してないか？」