あまり真剣に聞いて貰えてない事に、仁美は軽くため息を付いた。

「‥先輩は、練習出来る身体があるのに勿体無いです‥」

ポツリと仁美が呟いて、仙道はハッとした。
悲しそうな顔だった。
仙道は仁美が怪我でバスケが出来なくなった事を思い出す。

「‥そうだな‥勿体無いな、出るよ練習」

仙道がそう言うと、仁美は顔を上げて、ぱっと明るく笑った。
その笑顔が嬉しくて仙道は腰を上げた。

「ちょっとバスケしようか」
仙道にそう言われて、仁美は後をついて行った。
2人が向かった場所は体育館だった。
体育館の重たい扉を仙道が開けた。

ムワッと生暖かい空気が顔にかかった。
この時期になると、閉めっぱなしの体育館はとても蒸すのだった。

仙道はボールを倉庫から取り出すと、仁美にパスした。
「シュートしてみて」
そう言われて、仁美はその場所からシュートをした。
ボールは綺麗な弧を描いて、ゴールに吸い込まれる様に入っていった。
ボールとゴールの網が擦れる良い音が体育館に響いた。

「すげぇ、女の子なのにワンハンドなんだ」
そう言われて、少し照れながら言った。
「父のプレイがカッコ良くて、ずっと真似してたんです。」