「辛くなったらすぐ言って、すぐ行くから。」
そう言うと仁美は大丈夫と、悲しそうな顔をした。
俺は隠れた仁美の横顔を見ようと、髪を耳にかける。
くすぐったかったのか、仁美は肩をくすめて笑った。
やっぱり笑った顔が1番可愛い。

駅に着くと、もう笑顔は無くなっていた。
一回改札を出て、俺は仁美と向き合う。
「‥来週は土曜日から出かけよう。連絡するから。」
仁美は俯きながら頷いた。

どうか一緒に居る時間はいつもの笑顔でいて欲しい。
仁美と繋いだ手を離す事が出来ず中々離れられない。
そろそろ仁美も困っている。

このまま連れ去りたい衝動を抑えて、俺は手を離した。
「‥家着いたら連絡して。」
仁美は頷いた。

そのまま歩いて行く仁美が見えなくなるまで、見送った。
きっと仁美は俺が着いて行くと言っても断るだろう。
これが正解と分かるのに、不安でいっぱいになるのは、まだ伝えきれていない事がたくさんあるから。

俺はこの先ずっとそれを仁美に語りたいんだ。