仁美の周りにはいつも人が居た。
女子も男子も仁美はたいてい囲まれている。
きっと仁美は仙道の事なんて知りもしない。
いつも一方的にこっちが見ているだけだ。
でもそれはどうしょうも出来ない距離だった。

仁美が入学して1週間がたった。
3年のサッカー部のエースが、仁美に告白をしたそうだ。
下級生にファンがいる様な、爽やかなモテ男なだけに、一瞬にして噂は広まった。

「断られたらしいよ」

仙道の耳に届けたのは、同じクラスの深居だった。
仙道は結果を聞いて、ホッとた。
同時にこんなに早く、仁美の恋話を聞くとは思っていなかったので、びっくりした。

（話をした事の無い子の恋愛話に一喜一憂するなんてキモいな）

まさか自分がこんな感情になるなんて、仙道は思ってもいなかった。
だけど、告白したいとか好きという気持ちではなく、あんなに可愛い子が誰かの物になるのが悔しいという感情だった。
しばらくは誰とも付き合わないで、仁美を見ては癒される環境が続いて欲しかった。

その週の集会は、新入生に向けての部活紹介だった。
バスケットボール部のエースである仙道も勿論新入生に向けてパフォーマンスをする予定だった。

この時に仁美にカッコいい姿を見せてアピールしたいスポーツマンは沢山居た。
もちろん仙道もそのつもりで張り切っていた。