あれ？楓って私の事が好きって話じゃないの？
楓があまりにもケロっとしいるので、全部自分の思い込みかもしれないと思った位だ。

私が不思議な顔をしていると、楓が続けて喋った。
「それでお前の事が諦められら、とっくの昔にやめてる。」
楓が真っ直ぐ私を見た言った。
「それでも仁美をインターハイに連れて行くのはそいつじゃ無くて俺だって思ってるから。」

楓の言葉に答える事も出来ず、私はただ楓を見ていた。
何故か涙が勝手に流れる。
楓は左手で、私の右頬に流れた涙を拭った。
楓の手が頬に触れた時に体がビクッと反応した。

「‥泣き顔ブサイク‥」
凄く嫌な顔をして楓が言った。
「悪かったわね！」
思わず楓の手を払って、涙を拭いた。
楓はそんな私を見て笑った。

楓の笑顔にまた涙が出る。
「仁美。」
楓は顔を覆っている私の手を取る。
変わりに楓の両手が私の顔を覆った。
「絶対そいつより俺を好きにさせる。だから毎日会いたい。」
仁美に好きな奴がいるより、会えない方が辛いと楓は呟いた。

お願いこれ以上泣かさないでよ。
楓の両手に私も手をかざした。
楓の顔が近づいてきたので、思わず俯いた。
楓はそのまま私のおでこに自分のおでこを押し付ける。

抱き合う訳でも、キスをする訳でも無い。
私と楓の関係が、それでも明らかに変わった。
私は楓の手を離し、楓の頭を両手で触れた。
楓をはじめて愛しいと思った15歳の春だった。