移動中は何も話さないで、ただ楓に掴まって自転車の揺れに耐えていた。
黙っていたら、楓が何考えているか分からない。
けど自分から聞く事は出来なかった。

楓はいつもの公園で自転車を止めた。
ついこの前の出来事が思い出される。
自転車からおりて、2人でベンチに腰をかけた。
しばらく続いた沈黙の中で喋りはじめたのは楓だった。

「‥この前は悪かったな」
多分、泣いていたのを置いて行った事を言っているのだろう。
そうさせたのは自分と分かっているので、私は大きく首を振った。

「ーで、マネージャーどうする？」
そんな私を見ながら、楓が言った。
一瞬私の思考が停止した。
ん？マネージャー？
私は勢いよく楓を見た。私の勢いに楓が引いていた。

「‥楓、私マネージャーをやりたくないんじゃなくて‥その‥好きな人が」
私は言葉を選んでゆっくり喋った。
先輩が同じ神奈川でバスケ部に居る。いつかぶつかるかもしれない。
どっちを応援出来るか今は決められないのだ。

「ああ、知ってる。」
必死に伝えようとしている私の言葉を遮って楓が言った。
私はびっくりして、もう一度勢いよく楓を見た。
「‥知ってたの？‥」
「‥中坊位から‥」