不思議だ、ここ数日は皮肉な事に先輩の事を考えるより、楓の事ばかり考えていた。

放課後も19時位になれば、この時期でも外は暗くなっていた。
校庭に出ると職員室と体育館だけが明かりが付いていた。
中からボールの音と、部員達の声が少し漏れていた。

体育館の横を通って正門に向かう。
この位置からは中は見えないので、足早に横切ろうとした。
私に気が付いたのは桜木君を見ていた水戸君だった。

「仁美ちゃん今帰りなの？」
生徒会があった事を話すと、水戸君は気を付けてと笑顔で言ってくれた。
桜木君達とは見かければ話す間柄になった。

水戸君と別れてイヤフォンをして音楽をかけた。
正門を出ようとした時、後ろから腕を掴まれた。
びっくりして振り返るとそこには楓が居た。
私を見かけて走ってきたのか、楓は息は上がっていた。

「‥何回か呼んだ。」
楓の言葉で我に返った。
今話しかけられているのは夢じゃ無いんだ。
私はイヤフォンを外して楓に謝る。

「暗いのに1人で帰らないで、俺が終わるの待ってて。」
そう言って私の手を引っ張って、体育館の方に向かって行く。
楓がこんな風に声をかけてきたくれた事にびっくりした。

「っ楓、私‥」
私が言いかけると楓は私の腕を離した。