楓を選ぶ事は出来なかった。
決して忘れる事など出来ない先輩への気持ちに私は絶望した。
きっと楓には、私に好きな人が居るとバレただろう。
楓は今何を思っている？
裏切られたと思っているだろうか。

私は楓に責められる為に、ゆっくりと顔を上げた。
そこには楓の姿は無かった。
しばらく呆然としていた。
気持ちが落ち着いてきて、頭の中を整理する。

楓はいつもなら私が泣いていたら、絶対側に居てくれた。
今姿を消したという事は、これが楓の答えなのだろう。
責めて、怒りをぶつけて欲しかった。
何も言わずに消えた楓に、楓の絶望の色を濃く感じて胸が痛んだ。

もうあの楓の笑顔を見る事は出来ないのだろうか。
楓が居なくなる事を想像した事はあるが、現実に訪れるとこんなにも辛いとは想像出来なかった。
それでも、楓の傷はこんなものでは無いだろう。
そう思うと、また涙が出てくる。

いつも当たり前にあった楓の笑顔は、もう2度と見る事が出来ないのだろう。
楓を失ってまで持ち続けているこの気持ちに何の意味があるのだろうか。

半年前、私は先輩に会いに行ったんだ。