その日の仁美は、流川のプレイは見ているが心ここにあらずの様だった。

「楓、私ね男バスのマネージャーになったの」

流川は一旦プレイをやめ、汗を拭きながら仁美に近づいた。
仁美はやっぱり流川を見ている様で目は合わない。
宙を見ながら、仁美はポツリと言った。

「仙道先輩と楓とどっちが上手かな‥」

名前は聞こえなかったが、自分と比べる人物が居るのは理解した。
瞬間流川はムッとなり仁美に背を向けた。

「うめぇ奴が居るなら、ぶっ潰すまでだ。」
「潰さないでようちのエースなんだから」

流川の言い方に仁美は思わず笑って言った。
「でも会えるなら全国でだね、今回はうちは都大会で負けちゃったから‥来年会えたらいいね」

流川は仁美に向かい合った。
仁美を、じっと見ながら話した。
「その時はどっちを応援する？」　
仁美はびっくりして、ほうづえを着いていた手を離し顔をあげた。

「そんなの‥自分のチームにきまってるじゃん」
少しの間を上げて仁美が言った。
まぁ、想像通りの答えに流川は何も言わないで背を向けた。
「‥でも、楓が負ける事なんて想像出来ないや」
仁美のその言葉で流川は向き直す。
「楓は私の半身だから」
その時の仁美の言葉を流川は一生忘れない。
自分もそう思ってる。

絶対負けないと流川は闘志を燃やすのだった。