06. 第一の課題
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それから数日、ハリーは四方八方から冷たい視線を浴びせかけられた。
『みんな早いね、何してるの?』
地下牢教室の前まで来ると既に外で待っていたスリザリン生のグループの輪に混ざる。基本いつも無視されるか鼻で笑われるのだが、今日は皆機嫌が良いのか、返答が返ってきた。
「スズモリか…」
「今日はディゴリーと一緒じゃないのか?これを見せてやりたかったのに」
眠たそうなピュシーを押し退け、スリザリン生の一人はユリカの目の前までやって来た。
見せ付けるようにしてローブに着いているバッジを胸に押し付けると“セドリック・ディゴリーを応援しよう”という赤文字が消え、“汚いぞ、ポッター”という緑に光る別の文字が浮かび出た。
「いいだろう?お前もどうだ?」
『ぜひいただきたいな』
張り付いた笑顔でユリカは渡されたバッジを受け取ると自身の鞄に入れ、スリザリン生達が付けているバッジもローブから取って入れだした。
「何するんだ」
「いくら気に入ったからって、俺たちの分まで取らなくたっていいだろ?」
『あのね、悪い行いをすると自分に返ってくるって言葉知ってる?』
「は?」
『人を物笑いの種にして何の特になるの!あなた達がハリー側だったらどんな気持ち?私はみんなの持ってるスリザリン生の偏見もなくしたいの!』
スリザリン生達の間でどっと笑いが起きる。
腹を抱えて笑われたかと思ったら頭をポンポンと叩かれる。
そんな彼らにユリカは口をへの字に曲げる。
『これは決闘かぁ?』
「ぷっ、決闘って……戦ったことあんのかよ!」
「三対一で勝てるかな、お嬢ちゃん」
「それはさすがにフェアじゃないんじゃ…」
「まだ寝ぼけてるな、ピュシー。ここは競技場じゃないぞ」
ユリカはそんなに言う奴らには、と杖を向ける。
「スズモリ、杖をしまえ……ディゴリー、お前もだ」
背後を見るといつから居たのか、同じく杖を構えたセドリックが近くに立っていた。
突然現れたスネイプにその場が静寂に包まれる。
「グリフィンドールとハッフルパフから十点減点。早く席に着きたまえ」
スネイプは二人に減点を言い渡し、いつも以上に険しい顔をしてユリカを見据える。
「どうやら、Ms. スズモリは我輩の貯蔵庫から薬草をくすねるだけでは気がすまないらしい。同じ寮のポッターに負けず劣らす目立ちたがりのようだ…」
ユリカは気にせず、スネイプにとって減点といびりは所謂愛情表現だと自分なりに解釈して、他の生徒達と共に教室内に入った。
「減点されちゃったね」
『知らないふりしてくれて良かったのに』
「そんなこと出来るはずないだろ」
『だって…私がさっき何の呪文出そうとしてたと思う?“オーデキウス”だよ』
「“オーデキウス”?花を出す呪文だよ、ね?」
『頭に大量に降らしてやったら少しはお淑やかになるかと思って』
「……ふっ、これは僕が参加しなくても君の勝ちだったかもしれないな」
『でしょ?でも、教室前を汚したって更に減点されてたかも……ありがとね』
いつもと同様に一緒の机に鞄を置いて会話をしていると、スネイプの視線を感じ、ユリカとセドリックは慌てて目を落として授業の用意に戻った。
スネイプが目を逸らすと、二人は顔を合わせてクスッと笑った。
『あ…誤解しないで!私はハリーだけじゃなく、代表選手みんな応援してるからね!』
「そんなの普段のユリカを見てれば分かるさ」
『セドリックの優勝も心から願ってるよ。もちろん、身の安全が第一優先事項だけどね』
「本当に君には敵わないよ……ありがとう…!」
眉を下げて小声でそう言うセドリックにユリカは微笑んだ。