05. 炎のゴブレット
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日が落ち、ムーディと共に大広間に向かうと、蠟燭の灯りに照らされた大広間はほぼほぼ満員だった。
一緒に歩いてきたムーディが向かった教職員テーブルの方を見ると、まだ空席であるダンブルドアの椅子の正面に“炎のゴブレット”が移されていた。
「アンジェリーナだといいな」
アンジェリーナも原作通りにエントリーしたらしく、すっかり髭のなくなったフレッドの声かけに皆が頷いた。
ハロウィーン・パーティは妙な緊張感が漂っていた。
二日続けての宴会に歓喜していたのはユリカだけだったかもしれない。そのくらい、大広間の誰も彼もが首を伸ばし、待ち切れないという顔をしてダンブルドアはまだ食べ終わらないのかとそわそわしたり、立ち上がったりして、目の前にある豪華な食事ではなく、ダンブルドアを見つめていた。
ついに金の皿が綺麗さっぱりと元のまっさらな状態になり、期待に大きくなった大広間のざわめきも、ダンブルドアが立ち上がると一瞬にして静まり返った。
「よいか、待ちに待った時がやって来た。代表の発表じゃ」
ダンブルドアは杖を大きく一振りし、くり抜きかぼちゃを残してあとの蝋燭を全てを消す。
全員が固唾を飲んで見守る中、真っ暗な部屋に青白く輝いていたゴブレットの炎が突然赤くなり、火花が飛び散り始めた。
次の瞬間、めらめらと燃え上がる炎から焦げた羊皮紙が一枚、はらりと落ちてきた。
「ダームストラング代表は────ビクトール・クラム!」
炎の明かりを頼りに、はっきりした声でダンブルドアが読み上げた。
大広間中が歓声の渦に包まれる中、クラムはスリザリンのテーブルから立ち上がり、教職員テーブルに沿って後ろの扉から隣の部屋へと消えた。
数秒後に再び炎が赤く燃え、二枚目の羊皮紙が飛び出す。
「ボーバトンの代表選手は────フラー・デラクール!」
フラーはシルバーブロンドの髪をさっと振って後ろに流し、クラム同様に扉へと進んだ。
フラーが隣の部屋に消えると、また沈黙が訪れた。興奮で張りつめた沈黙が痛いほどに肌に食い込むようだった。
そして三度、炎が赤く燃えて溢れるように火花が飛び散り、ダンブルドアは三枚目の羊皮紙を右手でとらえた。
「ホグワーツ代表選手は────セドリック・ディゴリー!」
隣のテーブルから大歓声が上がる。
アンジェリーナを含め、近くに座っていたグリフィンドール生は残念そうに拍手を送った。
「よろしい!これで三人の代表が決まった。ただし、歴史に名を残すのはただ一人。ただ一人だけが勝利の証として掲げることが出来るのじゃ。この“優勝杯”を!」
ダンブルドアがクラウチの置いた“モノ”を示すと掛かっていた布が吹き飛んで明々と輝く“優勝杯”が現れた。
すると、スネイプが怪訝な顔で前に出た。
スネイプの目線の先をダンブルドアが振り返ると、“炎のゴブレット”が四度赤く燃え始めていた。火花がほとばしり、空中に炎が伸び上がると四枚目の羊皮紙が現れた。
ダンブルドアはそれをとらえ、暫し眺めた後に読み上げた。
「ハリー・ポッター」
大広間の全ての目が一斉にハリーに向けられる。ただ一人を除いて。
ユリカの目線の先のムーディはあたかも予期せぬ事態のように振舞っている。
そしてハリーは放心状態で座ったままだ。
「ハリー・ポッター」
再びハリーを呼んだダンブルドアの声は、ユリカが事前に話していたからか、穏やかなものであったが、微笑んではいなかった。
「行くのよ、行かなくちゃ!」
ハーマイオニーがハリーを少し押すようにして囁いた。立ち上がる際にローブの裾を踏んでよろめきながらグリフィンドールとハッフルパフのテーブルの間をハリーは進んで行った。
「ズルしたんだ」
「十七歳になってないだろ」
大広間がざわめき、非難の声が次々と上がった。
誰も拍手をしない。動揺するハリーを立ち上がって良く見ようとする生徒もいる。
『(私も名前を入れて貰えば良かったかな…)』
そしたら少しでもハリーの気は休まったかもしれない。
ムーディの前を通るハリーを見つめながらユリカは思った。